サンクスギビング(Thanksgiving)の歴史とアメリカ人の過ごし方

雑学

毎年11月の最終木曜日は、サンクスギビングデー(Thanksgiving day)と呼ばれるアメリカの休日です。

サンクスギビングは日本語に訳すと「感謝祭」になります。この日は、どの家庭でも、家族や親戚、友人で集まってターキー(七面鳥)を食べながら「感謝の意を表す」のが古くからの風習です。

そんなサンクスギビングですが、いつ頃から始まったのでしょうか?そこには、アメリカの歴史が深く関係しています。

本ページでは、歴史的な背景や現代のアメリカ人たちの過ごし方について紹介します。

加えて、サンクスギビングは日本のお正月に似ていると言われます。具体的にどこが共通しているのかについても合わせて紹介したいと思います。

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サンクスギビングの起源

大航海時代の1620年にさかのぼります。

当時「ピューリタン(清教徒)」と呼ばれる純粋なプロテスタントの信仰を求めるキリスト教徒たちは、自分たちの理想と異なるイギリス国教会体制にまっこうから反対し迫害を受けていました。これをきっかけとして一部のピューリタンは信仰の自由を求めてメイフラワー号に乗り込み、1620年に「ピルグリム」としてアメリカ大陸にわたりました。これがアメリカ合衆国の建国の起源でもあります。

メイフラワー号は元々は貨物船として主にワインを運ぶためにヨーロッパ各国を結んでいた船だったそうです。アメリカへ渡った際の乗客は102名、乗組員は25~30名で、航海日数は66日でした。メイフラワー号の大きさは全長約30m、幅約8メートルとテニスコートほどの大きさ。このスペースに130人ほどが2か月以上も過ごしたことになりますから、相当過酷な環境だったに違いありません。

イギリスを出発したメイフラワー号は66日を経て、アメリカ、マサチューセッツ州プリマスの辺りに辿り着きました。本来の目的地はハドソン川河口(現在のニューヨーク市付近、当時のイングランドのヴァージニア入植地の北端あたり)だったのですが、アメリカ大陸に到着した時にはすでに冬(1620年11月)になっていたため、プリマスで冬を越すことにしたようです。

冬の間、乗客らはメイフラワー号の船内で過ごし、壊血病、肺炎、結核などの病気が発生したそうです。また、食料を確保するために農作物を育てようと試みましたが、時期が悪く、更に彼らが持ち込んだ植物(小麦)は新天地では発芽しませんでした。その結果、冬を生き延びたのは約半数の53人で、乗組員も約半数が死んでしまいました。

冬も終わりかけた1621年3月になると、先住民(ネイティブアメリカン)がピルグリムたちに接触します。当時入植者たちは先住民から自分たちの生活を脅かす敵としてみなされていましたが、話し合いが行われ、ピルグリムが先住民が敵対する部族から先住民を守ることを条件にこの地に留まることが許されたそうです。

先住民たちはピルグリム達がそれまで知らなかったトウモロコシの育て方を教え、新しい土壌でよく育つ農作物を教えました。また魚の釣り方、貝の採り方、森の中を音を立てずに移動して獲物を狩る方法なども教えました。ピルグリム達は先住民の助けや指導を受けることがなければ、全滅していたとも言われています。

先住民は1年を通じて、土地がもたらす多くの恵みに対する感謝の祭事を行っていました。そしてピルグリムもまたイギリスで、収穫のときに感謝祭を行っていました。1621年の秋までには、彼らは新しい土地で暮らしていくことを学び、トウモロコシ、大麦、豆類、そしてカボチャなどの豊かな収穫を得ました。

先住民の助けを得たことで生き延びたピルグリム達が、この収穫の恵みに感謝の気持ちを込めて先住民達を招待したのが感謝祭の始まりとされています。

なお、アメリカで正式に感謝祭の日が設けられたのは独立宣言後の1789年です。初代大統領のジョージ・ワシントンが11月26日とすることを提案したそうです。国民の休日に指定されたのはそれから約40年後の1827年のことです。

メイフラワー号とプリマス

プリマス(Plymouth)はマサチューセッツ州にある港町の名前です。現在はメイフラワー号の後継であるMayflower II号のレプリカが観光客向けに停泊しています。アメリカ人にとってメイフラワー号は信教の自由の象徴であり、歴史の教科書で必ず触れられています。先祖がニューイングランド地方出身だというアメリカ人は、メイフラワー号の乗客の末裔だと信じていることがよくあるようです。

サンクスギビングの過ごし方

「11月の最終木曜日」が感謝祭ですが、翌日の金曜日も「感謝祭翌日」という休日となり、土日を合わせると4連休のビッグホリデーになります。

サンクスギビングの1週間前くらいになると、アメリカ人たちはホリデーモードに入り、「Have a great Thanksgiving !」、「Happy Thanksgiving !」という言葉が飛び交うようになります。

感謝祭当日は、普段休日でも営業しているスーパーや小売店もお店を閉めます。もちろん営業しているお店もありますが、2/3くらいは閉まっているといった具合で、まさに日本の元旦と同じような雰囲気です。

なお、「Have a great Thanksgiving !」、「Happy Thanksgiving !」は日本でいう「良いお年を!」、「あけましておめでとう!」と訳すとしっくりきますね。

家族や友人とターキーを食べる

サンクスギビングでは、家族や親戚、友人で集まってターキー(七面鳥)を食べる人がもっともメジャーな過ごし方です。なぜターキーかというと、先住民達を招待した感謝祭の時に出されたご馳走が七面鳥であったとされているからです。日本でいう「おせち料理」のようなものなのでしょうね。

以下ターキーの写真です。鶏よりも大きく、色が黒っぽいので、実際に見ると結構な威圧感があります。私の住んでいるボストンエリアの住宅街(Brookline)では、野生?のターキーに出会うことができます。ターキーの肉は独特なに匂いがありますが、チキンよりも脂身が少なくさっぱりしていて食べやすいです。

Turkey (bird) - Wikipedia

テレビ鑑賞

サンクスギビング当日は、毎年ニューヨークでメイシーズ(Macy’s)いう大手百貨店が主催するパレード(Macy’s Thanksgiving Day Parade)が行われます。このパレードは1924年に始まった非常に歴史の長い大規模イベントで、毎年テレビ中継が行われ、全米が注目します。

ルートは以下のように、セントラルパーク横からMidtown Southにあるメイシーズ本店まで約5kmを半日かけて行進します。

パレードでは、歌手やアニメやゲームのキャラクターなど人気者が選ばれます。2021年はスヌーピーやスポンジボブ、それから、日本でもお馴染みのポケモンキャラやドラゴンボールの孫悟空など様々なキャラクターがバルーンで登場しました。孫悟空は25年前からパレードの常連だそうです。日本のキャラ達が活躍する姿が見れるのはうれしいですね。

なお、このパレードはNBCを通じてリアルタイムで全米で放送され、毎年5000万人(国民の約13%)ほどが視聴すると言われています。私も2021年は自宅から地上波放送で視聴しました。

以下はバイデン大統領が音声ゲスト出演したときの様子です。ホワイトハウスから奥さんと一緒にテレビでパレードを視聴していたようです。こういった姿からも、本パレードが国民的人気を誇るイベントであることが分かります。日本で例えると「紅白歌合戦」のようなものなのかもしれないですね。

ショッピング

「ブラックフライデー」という言葉を日本でも耳にすることが多くなってきましたが、これは「感謝祭翌日の金曜日」のことで、この日から、年に一度のセールイベントが行われます。

ブラックフライデーの起源は1950年。感謝祭翌日になると毎年郊外から大勢の人が押し寄せて(警察が困るくらい)街が人でごった返すことから、フィラデルフィア警察が名付けたと言われています。

この時期は多くの小売店でセールが行われ、年間の取引価格の10%がこの数日で消費されるとも言われています。普段ディスカウントされにくいアップル製品もコストコやウォルマートなどで大幅な値下げが行われる場合もあります。日本でいう「初売り&福袋争奪戦」に似ています。

ちなみに、「サイバーマンデー」というのは、感謝祭の休暇が終わった翌日の月曜日に行われるイベントです。これは、ブラックフライデーに注文が集中するのを防ぐための施策なのでしょう。

旅行

祝日があまり多くないアメリカにとって4連休は絶好の旅行のタイミングです。前後に有給休暇をくっつけて長期旅行を楽しむ人たちもいます。

2021年は230万人ほどが旅行を楽しんだそうです。ただし、11月後半は最低気温がマイナスになる地域も多く、旅行のベストシーズンとはいえません。旅行先として選ぶならカリフォルニアやフロリダなどの比較的温かい地域が良さそうですね。

まとめ

サンクスギビングデーの歴史や過ごし方についてまとめました。アメリカに来る前は独立記念日(4th of July)やクリスマスが日本のお正月に近いのかな、と勝手に思っていましたが、こうして現地で過ごしてみるとサンクスギビングがアメリカ人にとって自分たちのルーツを思い出し、家族や友人と共に感謝の意を表す特別なイベントであることが実感できます。

アメリカではこの後もクリスマスや新年などのイベントが控えていますので、サンクスギビングから始まったホリデーモードは約1ヶ月ちょっと続きます。ニューヨークや私の住んでいるボストンでは最低気温は-2℃と真冬並みの寒さになっています。「冬眠の準備」のようなこの心地よい雰囲気をしばらく楽しみたいと思います。

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